【完】切ないよ、仇野君
うちの学校のバスケ部のマネージャーになるのは至難の業だと聞いたことがある。
神楽木先輩を筆頭に仇野君、小鳥遊といった目立つ人気者が多いこの部活のマネージャーになりたい子は多い。
その大半が彼等目当てだと分かっているから、と神楽木先輩と前からマネージャーをしている由貴先輩が見定めの為に面接を行うのだそうで。
そこを通るのが第一関門。第二関門はその後の部活のハードさだと言う。
その、厳しい第一関門の前に……何故か、私は望んだわけでもなく立っている。
部室の机を挟んで並んで座る神楽木先輩と由貴先輩の威圧に、今にも逃げ出しそうになってしまうものだ。
「ちーちゃんそんな緊張せんでよー!君はあん二人の推薦なわけやし、浮わついとるとは思っとらんて!」
……と言われても、隣の神楽木先輩は私を見定めるようにジーっと見つめているし、ホントもう、早く帰りたい。
「先に聞くばってん、お前、泰河や椿ば上手く丸め込んだりしちょらんな?」
「そっ!そんかこつしとりません!小鳥遊は去年文化祭実行委員会で少し仲良くなったくらいやし、仇野君に至っては今日初めて喋ったし、何で推薦されたつか、見当もつきません」
美形が凄むと怖い。私が怯えながら首をぶんぶん振るうと、神楽木先輩はふーっとひとつ、大きく息を吐いた。