【完】切ないよ、仇野君
照れ隠しだよ、仇野君
二年生になって十日、あっという間に過ぎ去ってしまったような気がする。
それは、私の生活が大きく変わったからかもしれない。
早朝、朝練の為に早く登下校する私と、朝だと放課後より静かに絵が描けると早出する雅美は、二人並んで学校への道を歩く。
美大を目指している雅美は、試験の必修科目の油絵を何枚も描いていて、他の美術部員よりも随分熱心だ。
「ねー、泰河君にヌードのデッサンモデルしてほしかとやけど、ちーからも頼んでばい」
「どうやろなぁ、優しかし、泰ちゃんなら頼めばやってくれるかもしれんけど、忙しかしなぁ」
雅美は仇野君……泰ちゃんを、えらく気に入っている。男としてと言うより、彼の均衡の取れた筋肉をだけど。
「んー、あぎゃんか良か体なかなかおらんけん逃したくなか!何なら、描いとるとこにちーもおっていいけん!」
それは多分、泰ちゃん嫌がると思うから遠慮しておこうと思う。