【完】切ないよ、仇野君
私が思っていることを読み取ってくれたのか、由貴先輩はニッコリ。


「良かった。あいつらが良か子ば連れてきてくれて」


最後の一個を磨き終えた由貴先輩のその言葉に少しだけ照れて、私は肩までの髪の毛を指先でくるくる、と巻き上げた。


「チューッス」


そんな会話をしているうちに、部員達はどんどん集まってくる。


バスケ部の朝練は、今後試合でレギュラー入りするであろう、ベンチ入りも含めた十五人が自主的に行っているものだ。


いつもの賑わいは無いけど、朝練の内容は、もしかしたら放課後よりも濃いかもしれない。


「おはよう、ちー」


集まる部員を見守りつつテーピングの残数を確認していると、練習着に着替えてきた泰ちゃんが穏やかに笑い、私の頭を優しく撫でた。
< 31 / 185 >

この作品をシェア

pagetop