【完】切ないよ、仇野君
「あ、ほら、噂しちょったら来たばい」


「え……なっ!?」


その強気そうな濃い目をくるり、と動かした先を私も見て、思わず絶句してしまう。


外の男子の部室棟から、部内一の俊足の椿と、折角の美形が物凄い形相の行雲キャプテン、その行雲キャプテンに横抱きされた雫ちゃんが目に写ったからだ。


「ギリギリセェェフ!」


「いや、完全アウトッスから。マジキモいッスわ。あんだけ蹴って起きんげな、リアルにキモいッス」


「ウルセェ雫!お前はもっと気合い入れて俺ば起こせ!」


朝から賑やかな行雲キャプテンと、その行雲キャプテンに未だに横抱きにされた一年生の雫ちゃんは、朝からキャイキャイと言い合いをしていた。
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