【完】切ないよ、仇野君
朝練を済ませ、教室に入ると殆どのクラスメイト達が集まってそれぞれのグループで各々話していた。
「椿、泰河、はよーっす!」
クラスでも目立つ方の二人はリーダーグループの面々に挨拶され、そちらの方に向かっていく。
私は雅美が戻るまでバスケのルールブックでも読んでようかな、と思い、そーっとフェードアウトの姿勢を取ったんだけど……。
「ちー、雅美ちゃんが来るまで話そうばい。ルールも隣におった方が教えやすいし」
「え……あ、そやね」
優しい泰ちゃんがそれに気付いて私の顔を覗き込んできた。
「男子と話しよって良かばい?分からんこつあったら隣におるけん聞くね」
「うん、分かった」
泰ちゃんを独り占めするなんて恐れ多い行動は出来ない私は、離れたい気持ちと優しさに甘えたい両方の気持ちを譲歩して、なんとかそこに収まった。