【完】切ないよ、仇野君
「彩月みたいなデカか女子と付き合ったら、チューん時背伸びせなんな！」


「ぎゃはは！彩月は美人やけど付き合えんわー！」


リーダーグループ達の派手な声、傷付けるつもりじゃないだろうけどキツいいじりが教室中に浸透する。


泰ちゃんや椿を狙っている女子達が小さく笑うのが、視線の端っこに映った。


クスクス、クスクス……。


その女子特有の、まるでバニラエッセンスのような甘い声が、怖い。


そして、言われた言葉が私のどん底の失恋を思い出させる。


どうして私は大きいんだろう。好きでこんなに大きくなったわけじゃないのに。


でも、嫌な顔をしてノリが悪いなんて思われたくない、笑わなきゃ、笑わなきゃ……。


「あ……はは！私もチューん時、頑張ってかがまなんけん首筋鍛えとかなんわ」


なんとか絞り出した答えは男子達の期待を何とか越えれたらしく、どっと笑いが上がる。


笑えてるかも分からない。顔中の神経が麻痺してる今、きっと私は不細工。


そんな私を、やはり隣から眉毛を下げて見つめる泰ちゃんと、左前で眉間に皺を寄せて見ている椿に、本当の心を見透かされている気がした。
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