【完】切ないよ、仇野君
泰ちゃんも泰ちゃんで、照れた時の癖だという顎を掻く仕草をしながら俯いている。


「うわぁ、ピュア過ぎません?こっちが恥ずかしいっちゃけど」


そんな私達のリアクションに、雫ちゃんが眉毛を寄せてため息を漏らした。


「お前達!いつまでダラダラしよっとかー!相手方がいらしたぞ!」


各々緊張感のない空間で話していたバスケ部のメンバーだったけど、背筋が伸びるような元気な声で、一斉に立ち上がる。


声を発したのは、バスケ部顧問の箱田瑞季(はこだ みずき)先生。


三年生の学年主任で、部員よりも元気なおばちゃん先生だ。


「整列!」


「「「「ハイッ!!」」」」


行雲キャプテンが皆に声をかけ、全員が体育館の入り口まで走る。


その入り口の外には、今日の練習試合の相手の、荒尾商業高校の部員の12名が、同じように横一列に並んでいた。
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