【完】切ないよ、仇野君
由貴先輩情報によると、荒商は去年の夏に強豪校として出て来た学校だそうで。
それというのも、中学校の時に全国大会を経験した人達が揃って荒商に行ったから強いみたい。
ということは、ベストメンバーの五人は私達と同い年。
7番の背番号を着るハーフの彼もまた、同級生ということになる。
身長だけじゃなくて、大人っぽいなぁ……と、ハーフの彼に思わず目が行ってしまう。
あの彼には、人を惹き付ける何か魔法がかかっているよう。
そんな彼が、急にピタッと動きを止めてこちらに走ってくる。
見過ぎたかな、視線に気付かれたのなら、とても申し訳ない。
女のわりに大きな私も視線は嫌いだ。ハーフで目立つ彼もまた、同じかもしれないのに。
私の目の前に立った彼は、やはり泰ちゃん程じゃないけど大きくて、私が見上げてしまうくらいだ。
焦って目を泳がせる私に、ハーフの彼は、大人びた表情をしわくちゃに寄せて、意外と無邪気な顔で笑った。