【完】切ないよ、仇野君
「ねぇ、これ、どっちがスポドリなん?ちょーだい」


「へっ……あ、すみません、汲みます」


てっきり私が見ていたのを不愉快に思ってやって来たんだとばかり思っていた。自意識過剰だったみたいで良かった。


スポドリの入った方のキーパーからコップで飲料を汲み、その紙コップを差し出すと、彼の大きな細長い手が私の手ごとコップを掴んだ。


「……金髪が珍しかった?そぎゃん見られたら恥ずかしかよ。まぁ、美人に見られるんは悪い気せんばってん」


「す、すみません!あの、珍しくて見よったわけや無いんですけど……」


やっぱり、気付かれていた。恥ずかしすぎる。


思わず俯いてしまった私だったけど、ひょい、と紙コップを取られたのとクツクツ喉仏を鳴らして笑う声に、そっと目線だけ上に向けた。


「怒っとらんけん大丈夫。言ったろ?美人に見られるんは悪い気せんて。あんま美人やけん、飲み物取りに来るふりして話しかけてしまったわ」


冗談なのか本気なのか、彼のその言葉に恥ずかしくなって目が泳いでしまう。


外国の血が入っているだけあって、目鼻立ちがハッキリした彼は……美形、だ。
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