【完】切ないよ、仇野君
「名前なんてーの?美人さん」


「あ、の……彩月、千歳です」


無邪気な笑顔で話しかけられてしまっては、答えるしかないというか、無条件にドキドキするというか。


「あー、さっき椿ちゃんと泰河が話しよった『ちー』は君なんや。良く気付く新米マネージャーさん」


二人が私のいないところで私を褒めてくれたというのも嬉しいし、少し恥ずかしい。


「おい、歩!何しよっと!」


「ゲッ!泰河!良かやっか!うちの学校ブスしかおらんけんちょびっとばっかし美人と話よるだけやし!」


私達の様子に気付いた泰ちゃんがこちらへやって来て、彼の頭を鷲掴みにする。


「じゃーなちー!また後で話そうなぁ!あ、俺御劔歩(みつるぎ あゆむ)っていうん!よろしくなぁ!」


泰ちゃんにズルズル引き摺られながらも手を降ってくる彼……歩君に私は瞼をパチパチ、と瞬いた。


「ふふ……あらあら、泰河といい御劔弟といい、長身のイケメンにモテモテやねぇ、ちーちゃん」


「わ!由貴先輩いつの間におったとですか!」


そんな私の横にひょっこり現れた由貴先輩は、何やら楽しそう。
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