【完】切ないよ、仇野君
互いに礼をして、ジャンプボールに立つ、両校のセンター。


荒商のセンターも180センチを裕に越えた選手なのに、泰ちゃんと並ぶと小さく見えてしまう。


審判を勤めるうちの二年生部員の手からトスが上がると、その大きな体をひらり、と両者が翻した。


その一瞬の戦いを征した泰ちゃんの大きな掌にボールが当たり、弾けたボールは椿の手元に。


「一本!まずは一本取るよ!」


そのボールを、ゆっくりとしたストロークでドリブルする音が、大きく空間に響き渡る。


「「「「水高!水高!水高!」」」


新入部員とベンチの応援が飛び、更にドキドキが加速する。


ああ、始まるんだ。なんて当たり前のことに、いちいち心臓が加速度を緩めないんだ。
< 52 / 185 >

この作品をシェア

pagetop