【完】切ないよ、仇野君



でもね、泰ちゃんならきっと大丈夫。


好きだから知っている。


泰ちゃんが、日々のハードな練習の中で、朝練の前に走って、放課後の練習の後に体育館が閉まるまで練習して、また走っていることを。


主役になれないポジションの中で、花形選手の役に立つために、努力を怠らないことを。


試合はあっという間にラスト12秒。


花形スタープレイヤーの歩君が、たった一点の差を逆転する為に、ディフェンスを掻い潜りゴール下へ決死の思いでたどり着く。


ゴール下では、今日何度となく見て来た、泰ちゃんとの一騎討ちの瞬間。


心臓を何かにぐわぁ、と掴まれて、熱い、得体の知れないものが込み上げる。
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