【完】切ないよ、仇野君
「…………頑張れ!」


溢れた想いはなんて簡単な言葉。


けれど、ゴール下の番人泰ちゃんが、一瞬、私にだけ微笑んだ気がした。


温かくて、柔らかくて、なのに、とても意思の強い笑み。


歩君が放ったワンショットが、泰ちゃんの中指を掠り、ゴールリングに嫌われて、弾ける。


「リバァァァン!!」


由貴先輩の力強い声が飛び、泰ちゃんと歩君、スクリーンアウトして体勢を整えていた行雲キャプテンと相手のパワーフォワードの四人が、空中の戦場へ、ボールを取るために駆り出す。


バシィィ、ドォォォン!!


その戦場で戦いを制したのは、今日誰よりも動いた泰ちゃん。


フロアにそれぞれの選手が着地した音が響き、泰ちゃんの大きな手から外に待っていた椿へパスが回った時。


ピッ、ピィィィ!


試合終了を告げるブザーが、空間を支配した。
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