【完】切ないよ、仇野君
雫ちゃんは透き通る猫目の奥の黒い瞳で私の全体をぼやぁ、と見渡す。


「ちー先輩は純粋な白。どんオーラも均等に持ってるが故に純粋で、染まりやすかごたるね」


ケイ先輩を押し退けてやって来た雫ちゃんは、私にずい、と顔を寄せる。


近くで見ると、その幼く儚く可愛らしい顔がどれほど整っているかが良く分かる。ただ、雫ちゃんにはどこか近寄りがたい独特の雰囲気があったりもするんだけど。


「泰河先輩ん持っちょる誠実ば示す紺色んオーラとは相性良か筈なんにねぇ。最近 、あんたら二人、もやっとるわ」


言いたいことを言うだけ言って、雫ちゃんの視線は私の後方斜め右の椿へ移る。


「……んで、普段周りにはゴールドのオーラ撒き散らしとるくせ、心は色濃い青のそこのキモい先輩は、何で更にブルーなんやろか?」


「雫……お前、マジで根性曲がってね?」


ギリ、と歯軋りさせて、何故だか苦い顔をする椿に、雫ちゃんはふ、と小さく鼻で音を立てて笑う。


「まぁ俺から言えるんはひとつだけや。そんモヤとかブルーば解消するには、やりたかようにやるんが一番っちゅうこっちゃわ。くよくよしたっちゃ悪い方に行く時は行くし、良か方には絶対いかん」


くよくよしてても良い方にはいかない、か。
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