【完】切ないよ、仇野君
「ふーん、そういうこつ」


私達のやり取りを見守っていたケイ先輩が、愛嬌のあるその曲がったアヒル口を吊り上げて、ニヤリ、と笑う。


「泰河に御劔弟に、加えて椿ときた。ちー、やるなぁ」


「やるって、私何もしとらんですけど……」


泰ちゃんは片想いだし、歩君ははっきり好きだと言われたからあれだけど……椿に至っては、そういうことじゃなくて私と泰ちゃんの気まずさにブルーなんじゃないの?


「ケイ先輩は察しが良かけん楽やわ。それに引き換えお姫様達は、鈍感にも程があるやろ」


お姫様、というのは多分、私と、話に着いていけなくて目をしぱしぱさせている行雲キャプテンのことだろう。


「何の話ばしよっとか、全く分からんっちゃけど。ちーと泰河、喧嘩したん?」


「いや、喧嘩やないです」


ピュア故に周りの恋愛事情に全く気付かない行雲キャプテンは、その女子よりも可愛い美貌を険しく歪ませている。


「……さ、そろそろ掃除の時間やわ」


「オイコラ待て雫ゥゥ!分かりやすか解説キボンヌ!」


そんなキャプテンを置いてさっさと退散しようとしている雫ちゃんに、キャプテンは急いで飛び付いていく。


正直、私も今の自分の状況を説明して欲しいくらいだ。
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