【完】切ないよ、仇野君
「あー、ダルいなぁ、掃除」
「とか言うて、自分ちはめっちゃ綺麗にするタイプやろ、椿」
屋上から掃除の割り当て場所へ各々移動するために別れ、私と椿は自分達の教室へと向かう。
私に指摘された椿は『大正解。うちボロいしなぁ』なんて気だるげな声を出しながら答える。
普段、持ち物や自分のテリトリーをめんどくさいと言いつつも綺麗に生理整頓する椿のことだから、家もさぞ綺麗なんだと思う。
お父さんと二人暮らしらしいから、家事全般をバスケと両立させているだけあって、椿は他の同級生の中でもしっかりしている方だ。
「それにしても、雫ちゃんって凄かね。椿が青いオーラっての、納得やわ」
今日の昼休みのことを思い出し、何となくそう呟くと、椿からため息が溢れる。
「当たりすぎて傷付くこともあるけどな」
「そうかもしれんね。遠慮んなかけん、ズバズバ言われそうやし」
だからさっきのこと、もっと詳しく相談したいけど怖いんだよな……と言葉に出さず思いながら教室の入口に差し掛かり、ドアを開くと教室の掃除メンバーが揃っていて、談笑している。