【完】切ないよ、仇野君
いつもの下校コース。
どちらも規格外に大きな私達の組み合わせは、周りの人達にはやっぱり珍しいみたいで、視線を感じる。
相変わらず俯いた私と、反対にそれを気にしない様子で背筋を伸ばした泰ちゃんは、嫌じゃない沈黙の中で並んで歩く。
「……ちー、こん間変なこつ言ってごめんなぁ」
その沈黙を、泰ちゃんがゆったりと破る。
その言葉は、思ってもみなかった言葉で、泰ちゃんが言ってるのは、練習試合のあの時のことなんだと、何となく思った。
でも、泰ちゃんは特別悪いことを言ったわけじゃないし、歩君のことを褒めるようなことを言っただけで。
もし仮に、私が泰ちゃんを好きじゃなかったとしたら寧ろ笑顔になるような言葉だったのに。
私が泰ちゃんのことを好きなのは一方的で、勝手に傷ついて、なのに、私がよそよそしいのを泰ちゃんは自分のせいだって、謝ってくれた。
そんな泰ちゃんに、私は何て返せばいいんだろうか。