【完】切ないよ、仇野君
頭の中でぐるぐる色々考えて押し黙っていると、泰ちゃんがそのまま言葉を続ける。


「あんな、話変わるばってん、ちーは昔ん俺に似ちょるって思っとっとよ」


「似ちょる……?」


「うん。自分に自信ば持てんで、周りん人ば羨ましかーって、思っとるとこ」


その言葉に、私は横を歩く泰ちゃんの方を見上げる。


泰ちゃんは、ずっと周りからの評価とか気にしないタイプだって思ってた。


いつも朗らかで、でも、ゴール下を守る時は確固たる自信に満ち溢れた人だって、そう感じてた。


「ほら、俺てバスケんこつ以外とろかど?せかせかしっきらんし、早口で喋れん。何か言われたりされても、直ぐに切り返すこつも出来ん。昔はそれが嫌やった」


あはは、と困り顔で笑う泰ちゃんのその声は、まろやかで甘くて、鼓膜を柔らかく包むよう。
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