【完】切ないよ、仇野君
「じゃあ、どやんして自信ば持てるようになったと?」


「んー、そいは違う。自信げな、未だに持っとらん」


ふふ、と可愛らしく笑った泰ちゃんの垂れ目の瞼はふにゃ、と弧を描き、もっと柔らかくなっていく。


「自信が無かつは一緒。ばってん、自分の良かとこも認めてやるようになった時、自信が無かとこも受け入れらるるごつなったとよ」


泰ちゃんは優しくて、穏やかで、主役になれなくても自分の役割を果たして縁の下の力持ちな、素敵な人だ。


けど、私の素敵なとこってどこ?いつもうじうじしてて、俯いてて……こんな私は変われるの?


そんな疑問を視線に込めて泰ちゃんを見つめると、ジャージ姿の泰ちゃんも立ち止まる。


青空の下で、水色と白のジャージを纏った泰ちゃん。その泰ちゃんからは、柔軟剤の爽やかな香りが漂った。
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