【完】切ないよ、仇野君
そこには、先にビブスを手洗いする由貴先輩の姿がある。


「先輩!いつもすみませ……いや、ありがとう、ございます。大変な仕事ばやってくれて」


「おう!よかよか!好きでしちょるし、ちーちゃんの綺麗な手が荒れるんは悲しかけんね」


ビブスを濯ぐ手を止めた先輩は、ジャージを履いた太股で、その濡れた手を拭う。


その手は私より身長が15センチも小さいのに、私より大きくて。水仕事で少し荒れてて。


「綺麗か手は由貴先輩の方ですやん。やのに、こんなに荒れとる……」


「やけん、良かとよ!私はこの荒れた手ば誇りに思っとるし。それよか、ちーちゃん最近『ありがとう』が増えたごた。益々可愛かね」


水ですっかり冷たくなって赤くなった手が、私の手をきゅっと包み込む。


「ほんなこつ?」


「ほんなこつよ。ありがとうが言える子は可愛かよー!」


可愛くて、明るくて、向日葵みたいな由貴先輩に褒められると、なんだか凄く照れてしまう。
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