個人的事情につき“休暇をいただきます”

「―今日は残業しなくて済みそうか?」

「はい、大丈夫そうです」

「―そうか。
俺、今日は会社に戻らないから…予定通りで」

「はい、わかりました」





電話越しの課長の声が。

いつもの5割増しくらいで優しく感じるのは気のせいではないはず。

でもこれはプライベートではなくて、仕事。

仕事中の会話なのだ。

勘違いしそうになる頭の中身を払拭するようにフルフルと頭を振る。

しかし。

受話器を耳にあてながらのその姿は、何かをやらかしたように見えるらしく。

少し離れた中村くんが“藍川、頑張れ”と言わんばかりに、視線を投げてくる。





「―無理は、するな」

「…わかりました」

「―また、連絡する」

「はい、お疲れさまでした」





課長は約束の確認のために電話をくれたらしい。

それだけでも小躍りをしたくなるくらい嬉しいのに。

“無理は、するな”だって。

心配してもらっちゃった。

それだけで仕事終わるまで頑張れる。

よし、頑張ろう!!




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