ツンデレ社長と小心者のあたしと……zero
それからのあたしは、大学生活を続けながらイラストコンペに応募するようになった。
ミツアキは姿を見せないまま、やがて大学を辞めたようだと風の噂で聞いた。
別れてから変わったことと言えば、城田社長が書いた書籍を読み、彼のブログを時折チェックするようになった。
全員が勝ち組でいい。
そう公言する彼は、人生をプラスに変えるヒントを惜しみなく発信し続けていて、あたしはその一つも逃すまいと一字一句に夢中になる。
知っても知っても、もっと彼の言葉が欲しくなる。
ミツアキを失った穴はすぐ癒えそうにはなかったけれど、前向きに生きる人間を全肯定してくれる、大き過ぎる優しさに触れていたかったのだ。
こうして大学生活も終わりに近づき、その頃あたしは自分を信じて応募をしたとある町のキャラクターコンペで初めて最優秀賞を受賞した。
認められた。
好きだった事で勝負をして初めて手にした栄冠は、小さな一歩かもしれないけれど、確実にあたしの背中を押した。
さらにその翌月、転機が訪れる。
城田社長のブログの隅の方に小さな文字を見つけたのだ。
《動ける社員募集、年齢学歴不問》
迷いは無かった。
もっと近くに行けたなら、自分が今以上に輝けると根拠もなくそう思えた。
どちらにしても、応募もしないで自分なんか……と諦めるようなあたしはもういない。
勝手に作った社長を模したキャラクター「きーだくん」
その絵を封筒に書き添えると、あたしはありったけの想いを詰め込んだ履歴書を、速達で郵送したのだった。
【END】