【完】女優橘遥の憂鬱
「海翔さんって、ホストだっただけあるね。気配りが凄い」
突然彼女は言った。
「貴方がご両親に全てを打ち明けたみたいに、私が日の光を浴びて生きて行けるようにしてくれた。もう誰にも後ろ指差されないようにしてくれた。あれだけ見せ付けられたら、記者の人達何も書けなくなるね」
彼女のそんな言葉を聞いて俺はハッとした。
海翔君は記者に興味本意での取材をさせたくなかったのだ。
だから強行手段に打って出ただけだったのだ。
俺はその時、自分の考えの未熟さを思い知らされた。
(そうだ。俺は考え無しの、根っから甘い奴だった。それに引き換え海翔君は苦労してきただけのことはある)
海翔君はきっと、彼女と彼女を育てた女性のことを記事にしてほしくなかったのだ。
記事にすると二人を傷付けるだけだと言いたかったのだ。
父親である社長が、悲しむことになると言いたかったのだ。
表現や弁論の自由って言葉だけで片付けてほしくはない。
何を言っても書いても認められるなんて、思ってほしくないんだ。
彼女をこれ以上苦しめないでやってくれ。
きっと海翔君はそう言いたかったんだ。
俺は思い出した。
あの、チェリーボーイの一件を。
その人は表向きは常連客で、マダムと呼ばれていたそうだ。
でも裏では汚い手を使って、飽きたホストをお払い箱にしていたようだ。
ホストには永久指名権てのがあって、やたらと変えられないそうだ。
だから、スキャンダルをでっち上げるそうだ。
海翔君の前任のナンバーワンホストがいきなり辞めて、海翔がその座に着いたそうだ。
その見返りに、マダムとの一夜を要求されたようだ。
一応行ってみた。
らしい。
でも逃げ出したそうだ。
(そうだよな、海翔君にはみさとさんがいたんだ)
俺は何も知らずそんなことを考えていたんだ。
クリスマスイヴの日に、みさとさんが就活に東京にやって来た。
その翌日に二人は電撃結婚した。
『俺達は、互いに兄妹かも知れないと思って悩んでいたんだ。でも好きだった。大好きだった。だから、みさとを追い掛けたんだ』
以前海翔君が言っていた。
そんなことがあったなんて知らなかった。
俺が初めて会ったのは、忘れもしない。モデル事務所の社長を訪ねて行ったあの日だったのだから。
突然彼女は言った。
「貴方がご両親に全てを打ち明けたみたいに、私が日の光を浴びて生きて行けるようにしてくれた。もう誰にも後ろ指差されないようにしてくれた。あれだけ見せ付けられたら、記者の人達何も書けなくなるね」
彼女のそんな言葉を聞いて俺はハッとした。
海翔君は記者に興味本意での取材をさせたくなかったのだ。
だから強行手段に打って出ただけだったのだ。
俺はその時、自分の考えの未熟さを思い知らされた。
(そうだ。俺は考え無しの、根っから甘い奴だった。それに引き換え海翔君は苦労してきただけのことはある)
海翔君はきっと、彼女と彼女を育てた女性のことを記事にしてほしくなかったのだ。
記事にすると二人を傷付けるだけだと言いたかったのだ。
父親である社長が、悲しむことになると言いたかったのだ。
表現や弁論の自由って言葉だけで片付けてほしくはない。
何を言っても書いても認められるなんて、思ってほしくないんだ。
彼女をこれ以上苦しめないでやってくれ。
きっと海翔君はそう言いたかったんだ。
俺は思い出した。
あの、チェリーボーイの一件を。
その人は表向きは常連客で、マダムと呼ばれていたそうだ。
でも裏では汚い手を使って、飽きたホストをお払い箱にしていたようだ。
ホストには永久指名権てのがあって、やたらと変えられないそうだ。
だから、スキャンダルをでっち上げるそうだ。
海翔君の前任のナンバーワンホストがいきなり辞めて、海翔がその座に着いたそうだ。
その見返りに、マダムとの一夜を要求されたようだ。
一応行ってみた。
らしい。
でも逃げ出したそうだ。
(そうだよな、海翔君にはみさとさんがいたんだ)
俺は何も知らずそんなことを考えていたんだ。
クリスマスイヴの日に、みさとさんが就活に東京にやって来た。
その翌日に二人は電撃結婚した。
『俺達は、互いに兄妹かも知れないと思って悩んでいたんだ。でも好きだった。大好きだった。だから、みさとを追い掛けたんだ』
以前海翔君が言っていた。
そんなことがあったなんて知らなかった。
俺が初めて会ったのは、忘れもしない。モデル事務所の社長を訪ねて行ったあの日だったのだから。