【完】女優橘遥の憂鬱
私には解っていた。
私の父が本当は誰なのかが……
『ねぇ母さん。その人遥って言うの?』
『あぁそうだよ。知らなかったのかい?』
『彼女、監督に橘遥って名付けられたのです。もしかしたら監督は全て知っていて……』
そう……
監督は全て知っていた。
だから私は後に、あの三ヶ月の誤差が監督を狂わせた事実に気付いたのだ。
『監督? 橘遥?』
あの時、その言葉を聞いてドキンとした。
其処に居たのは社長だけではなかったからだ。
きっと秘書の女性は海翔さんのお父様から聞いていて事情を知っている。
そう思っていても、此処でその名前は出してほしくなかったのだ。
『ほら、この前暴行未遂で逮捕された、元報道監督です。俺、監督の元で彼女の撮影をしていました』
そう言いながら、彼も秘書が傍にいることに気付いたようだ。
『橘遥って? もしかしたらA……』
だから、そう言い掛けたところで彼が止めに入ったのだ。
『すいません。いずれ判ることかも知れませんが……』
『すまんがキミ、ちょっと席を外してくれないか?』
彼に言われて、回りに人のいることに気が付いた社長が言った。
『はい。では廊下で待機しております。御要望がございましたらお声掛けをお願い致します』
その言葉を受けて、社長秘書はそっと部屋を後にした。
『橘遥……って、もしかしたら例の戦慄か? 何故、そんなこと……』
(社長が戦慄を知っていた!!)
もう……、それだけで終わったと思った。
でも、社長は私の体をバグしてくれた。
『お帰りはるか』
って言いながら……
優しくされて、今まで監督にあじあわされた苦労も忘れた。
ハロウィンの悪夢撮影当日。
監督も辛いんだと思ったんだ。
監督がヤラセで責任を取らされた経緯は想像もつかない。
でも、時々私を見る目が気になる。
優しくなったり厳しくなったりして本当に掴み所のない人だった。
そう……
きっと監督ははるかさんを愛していて、私と重ねていたんだ。
恋人にそっくり私を憎んだのだ。
それでも、私は監督を許せない。
私のヴァージンをあんな奴等に奪わせたことを。
その上で、私を……
実の父に犯された娘が旦那に気遣われて……
彼にそんな思いをさせた監督を……
私は絶対に許せない。
私の父が本当は誰なのかが……
『ねぇ母さん。その人遥って言うの?』
『あぁそうだよ。知らなかったのかい?』
『彼女、監督に橘遥って名付けられたのです。もしかしたら監督は全て知っていて……』
そう……
監督は全て知っていた。
だから私は後に、あの三ヶ月の誤差が監督を狂わせた事実に気付いたのだ。
『監督? 橘遥?』
あの時、その言葉を聞いてドキンとした。
其処に居たのは社長だけではなかったからだ。
きっと秘書の女性は海翔さんのお父様から聞いていて事情を知っている。
そう思っていても、此処でその名前は出してほしくなかったのだ。
『ほら、この前暴行未遂で逮捕された、元報道監督です。俺、監督の元で彼女の撮影をしていました』
そう言いながら、彼も秘書が傍にいることに気付いたようだ。
『橘遥って? もしかしたらA……』
だから、そう言い掛けたところで彼が止めに入ったのだ。
『すいません。いずれ判ることかも知れませんが……』
『すまんがキミ、ちょっと席を外してくれないか?』
彼に言われて、回りに人のいることに気が付いた社長が言った。
『はい。では廊下で待機しております。御要望がございましたらお声掛けをお願い致します』
その言葉を受けて、社長秘書はそっと部屋を後にした。
『橘遥……って、もしかしたら例の戦慄か? 何故、そんなこと……』
(社長が戦慄を知っていた!!)
もう……、それだけで終わったと思った。
でも、社長は私の体をバグしてくれた。
『お帰りはるか』
って言いながら……
優しくされて、今まで監督にあじあわされた苦労も忘れた。
ハロウィンの悪夢撮影当日。
監督も辛いんだと思ったんだ。
監督がヤラセで責任を取らされた経緯は想像もつかない。
でも、時々私を見る目が気になる。
優しくなったり厳しくなったりして本当に掴み所のない人だった。
そう……
きっと監督ははるかさんを愛していて、私と重ねていたんだ。
恋人にそっくり私を憎んだのだ。
それでも、私は監督を許せない。
私のヴァージンをあんな奴等に奪わせたことを。
その上で、私を……
実の父に犯された娘が旦那に気遣われて……
彼にそんな思いをさせた監督を……
私は絶対に許せない。