【完】女優橘遥の憂鬱
「監督は借金が完済されていたことを知りませんでした」
一通り挨拶を済ませた後で重要なことだけ伝えた。
私があの日、監督と交わった事実を社長は知っている。
それが背徳行為だったと気付かず、私自ら暴露してしまったから……
「何時の話?」
「私がCMのオーディションを受けた時です。監督はあの席でプロダクションの社長から私のAV出演を打診されたようで、借用書を渡されたのはその後だったようです」
「あ、あの時はまだかなり残っていたわね。でもCMの契約金で完済寸前になるはずだったのだけど……その金額より多く支払われた記憶があるわ」
「えっ!? それってもしかしたら、監督と一緒にいたって言う……」
「え、そうよ」
「えっ!? それじゃもしかしたら、私はそのプロダクションに買われたの?」
「いくら何でもそれは無いと思うわ。だって僅かな金額よ」
社長はそう言いながらも、そのCMの契約書の入った封筒を出してきた。
「ん、こんな書類あったかな? あれっ、これって!? 嘘でしょう? これによると、貴女はあのプロダクションの専属のモデルってこと?」
「えっ!?」
私は慌てて、その書類を見直した。
社長が示した書類は勝手に借金を完済させた書類だった。
でもそれは私の移籍完了の告知書でもあったのだ。
「あっ、そうか。そうだった。抗議しようとしていたら、貴女があんなことに……だから、私は貴女が自らあのプロダクションへ移ったと思い込んだのよ」
「結局、そのお金で彼女は買われたって訳ですか?」
「でも、本当に微々たる金額よ。幾ら何でもあんな少しで……」
「もし此処に記載されているプロダクションだったとしたら最悪だ」
彼は頭を抱えた。
「このプロダクションだよ。モデルの講義中にヤジ入れたタレントが所属していたのは……」
「でも、確か貴方が私の相手を調べてくれていたのよね?」
「ああ、でもプロダクション名が違うんだ。だから気付かなかった」
「確か社長は幾つか事務所構えていて、これはモデル専門だったかな?」
(それじゃ最初はモデルをやらせるつもりだったのかな?)
そう思った。
「何で気付かなかったんだろう?」
苦しそうに彼が言う。
「巧妙なのよ。きっと隠れ蓑なのね」
「隠れ蓑? 売れない娘はお色気路線に回すとかですか?」
「それでも売れなきゃ、最後はAV?」
一通り挨拶を済ませた後で重要なことだけ伝えた。
私があの日、監督と交わった事実を社長は知っている。
それが背徳行為だったと気付かず、私自ら暴露してしまったから……
「何時の話?」
「私がCMのオーディションを受けた時です。監督はあの席でプロダクションの社長から私のAV出演を打診されたようで、借用書を渡されたのはその後だったようです」
「あ、あの時はまだかなり残っていたわね。でもCMの契約金で完済寸前になるはずだったのだけど……その金額より多く支払われた記憶があるわ」
「えっ!? それってもしかしたら、監督と一緒にいたって言う……」
「え、そうよ」
「えっ!? それじゃもしかしたら、私はそのプロダクションに買われたの?」
「いくら何でもそれは無いと思うわ。だって僅かな金額よ」
社長はそう言いながらも、そのCMの契約書の入った封筒を出してきた。
「ん、こんな書類あったかな? あれっ、これって!? 嘘でしょう? これによると、貴女はあのプロダクションの専属のモデルってこと?」
「えっ!?」
私は慌てて、その書類を見直した。
社長が示した書類は勝手に借金を完済させた書類だった。
でもそれは私の移籍完了の告知書でもあったのだ。
「あっ、そうか。そうだった。抗議しようとしていたら、貴女があんなことに……だから、私は貴女が自らあのプロダクションへ移ったと思い込んだのよ」
「結局、そのお金で彼女は買われたって訳ですか?」
「でも、本当に微々たる金額よ。幾ら何でもあんな少しで……」
「もし此処に記載されているプロダクションだったとしたら最悪だ」
彼は頭を抱えた。
「このプロダクションだよ。モデルの講義中にヤジ入れたタレントが所属していたのは……」
「でも、確か貴方が私の相手を調べてくれていたのよね?」
「ああ、でもプロダクション名が違うんだ。だから気付かなかった」
「確か社長は幾つか事務所構えていて、これはモデル専門だったかな?」
(それじゃ最初はモデルをやらせるつもりだったのかな?)
そう思った。
「何で気付かなかったんだろう?」
苦しそうに彼が言う。
「巧妙なのよ。きっと隠れ蓑なのね」
「隠れ蓑? 売れない娘はお色気路線に回すとかですか?」
「それでも売れなきゃ、最後はAV?」