【完】女優橘遥の憂鬱
 『待った。先に遣らせてくれ。誰かこのカメラ頼む』

そう言ったが早いか、四つん這いの私の腰に手をおいた。


立て膝で腰を密着させすぐに奥まで入るカメラマンの若い身体。
それは身体の中を通り抜け、一番奥の壁をリズミカルに叩いた。


『あん』
その時私は不思議な言葉を発していた。


『さっき、コイツの顔を見た時ゾクッとしたんだ。苦痛に喘ぐ表情はただ者じゃなかった。そうか、初めてだったんか? だからあんなに拒絶しようとしていたんか? そりゃそうだ。いきなり……、しかもあんなぶっといのを捩じ込まれたらヒイヒイ言いたくもなるよな。きっと彼処が千切れそうだったんだろ?』

カメラマンは御託を並べた。


『悪かったな。監督がいきなり遣れって言ったからだ』


『そりゃそうだ。前技なんか遣ってたら、コイツは逃げていたよ。どうだ気持ちいいだろ? 最初、巨根のヤツに遣らせたからだ』


『先に難攻不落な要塞を突破させたからかな。物凄く遣り易い。それにこの締め付け加減……。あぁ、本当に気持ちいい!!』

カメラマンも喘ぎ声を上げながら、これでもと言うように私の身体を堪能していた。
私には彼がイッたのが解った。
傷口を消毒するみたいに物凄く滲みたからだった。


案の定、次に交代したのは監督だった。


『もっと力を入れろ。俺は気が短いんだ。みんなと同じ思いをさせないと後が怖いぞ』

私は仕方なく、最大限の力を込めた。


『あぁ、本当だ。マジに気持ちいい!! コイツはいい拾い物をしたな』


『拾い物!?』
私のその言葉に一瞬声を詰まらせた。


『何でもない。ホラ下っ腹に力が入ってないぞ、真面目に遣れ』
監督は上手く誤魔化しながらも、私に最大級の持て成しを催促していた。


『いいか、訴えるなんて考えるな。此方にはお前さんの両親の借用書がある。お前さんの身体でそれを払って貰おうとしているだけだからな』

監督は凄味を利かせて言い放った。




 私は結局其処にいた全員の言いなりになって、時間の許される限りみんなの腰を悦ばせていたのだった。


それは二十歳の誕生日に行った、最低最悪なバースデイプレゼンショーだった。


監督は天涯孤独の私に目を着け、ヴァージンを俳優達に奪わせた。


それを録画したビデオで大儲けを企んでいたのだった。


グラビアは袋とじで、苦痛に喘ぐ顔が購買力をアップさせたそうだ。

私は怖くて本屋にも近付けなかったのだが……


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