【完】女優橘遥の憂鬱
「貴女にはある借金は、大学の入学金だけよ。それも殆どモデルの仕事で完済してる。だって貴女は、高校三年生の時から二十歳前日まで仕事をしていたでしょう?」
「嘘……、私は二十歳の誕生日にグラビアの撮影で呼び出され、途中からAVの撮影に切り替わって生で遣らせたの。前にあった椅子に腕をがんじがらめに拘束されて、バックからデッカイの入れられた。じゃあ、あの屈辱は何? 何で私があんな目に合わなければならなかったの?」
私は泣いた。
涙も出なくなるほど泣いていた。
社長はそんな私の体を抱き締めてくれていた。
「その時、『事務所から安全日だと聞いている。だから生で遣らせたんだ』って言ったんだ。『何にも付けずに女を犯すのは最高だろう』って、俳優陣に向かって言ったんだ」
「待って、ウチから安全日だって聞いたって。そんなこと教えるはずがない。あっ、そうだ。確か貴女が付けていた基礎体温表が無くなっていたわ。監督はきっとそれをここから盗んだのよ。そうに決まっているわ」
「あっだから『いい拾い物をした』って言ったの」
「それに違いないわ。ご両親の完済した借金の借用書を悪用したのよ。あの監督なら、ウチが基礎体温表を記入させているって知っていてもおかしくないわ」
そう言いながら社長はタレントの基礎体温表を出してきた。
「これでね。女性の微妙な体長を知るの。生理前に痛くなったり、あ、男女関係盛んな娘には安全日を教えたりするの。でも、決して貴女に記入させた目的はそのためではないわ」
社長は私の体を思いっきり抱いてくれた。
「私が迂闊だった。貴女のご両親の借用書はとっくに始末したものだと思い込んでいたわ。貴女をこんな目に逢わせた張本人は私かも知れない……」
そう言いながら、パソコンで検索を始めた。
それは時効の項目だった。
「ごめんなさい」
私の言葉で社長はキーボードを叩くのを辞めた。
「私は社長に売られたと思い込んで……、社長を恨んでいました」
「謝らなくていけないのは私よ。本当にごめんなさい。一時の感情だけで、思い込んでいたから」
頭を下げた私に向かって、社長が声を掛ける。
でもその目はパソコンに注がれていた。
「ごめんね。許してなんて今更言えないけど。貴方の心を救いたいの」
社長はそう言いながら泣いていた。
「嘘……、私は二十歳の誕生日にグラビアの撮影で呼び出され、途中からAVの撮影に切り替わって生で遣らせたの。前にあった椅子に腕をがんじがらめに拘束されて、バックからデッカイの入れられた。じゃあ、あの屈辱は何? 何で私があんな目に合わなければならなかったの?」
私は泣いた。
涙も出なくなるほど泣いていた。
社長はそんな私の体を抱き締めてくれていた。
「その時、『事務所から安全日だと聞いている。だから生で遣らせたんだ』って言ったんだ。『何にも付けずに女を犯すのは最高だろう』って、俳優陣に向かって言ったんだ」
「待って、ウチから安全日だって聞いたって。そんなこと教えるはずがない。あっ、そうだ。確か貴女が付けていた基礎体温表が無くなっていたわ。監督はきっとそれをここから盗んだのよ。そうに決まっているわ」
「あっだから『いい拾い物をした』って言ったの」
「それに違いないわ。ご両親の完済した借金の借用書を悪用したのよ。あの監督なら、ウチが基礎体温表を記入させているって知っていてもおかしくないわ」
そう言いながら社長はタレントの基礎体温表を出してきた。
「これでね。女性の微妙な体長を知るの。生理前に痛くなったり、あ、男女関係盛んな娘には安全日を教えたりするの。でも、決して貴女に記入させた目的はそのためではないわ」
社長は私の体を思いっきり抱いてくれた。
「私が迂闊だった。貴女のご両親の借用書はとっくに始末したものだと思い込んでいたわ。貴女をこんな目に逢わせた張本人は私かも知れない……」
そう言いながら、パソコンで検索を始めた。
それは時効の項目だった。
「ごめんなさい」
私の言葉で社長はキーボードを叩くのを辞めた。
「私は社長に売られたと思い込んで……、社長を恨んでいました」
「謝らなくていけないのは私よ。本当にごめんなさい。一時の感情だけで、思い込んでいたから」
頭を下げた私に向かって、社長が声を掛ける。
でもその目はパソコンに注がれていた。
「ごめんね。許してなんて今更言えないけど。貴方の心を救いたいの」
社長はそう言いながら泣いていた。