【完】女優橘遥の憂鬱
 ハロウィンの悪夢の三人が、ヴァージンを奪った奴等だと後で知った。
だから俺を除外したのだ。

彼女の心の傷が増さないように、俺が反対するからか?


俺は強姦罪で逮捕されるのが怖かった。

だから監督にコキ使われても文句は言えなかった。


『一番罪深いのはお前だ』
って監督は言った。


『お前知らなかったのか。AVってのは体外放出なんだよ。皆で回すから、生で遣る時は中をキレイにしておかないといけないんだ』

監督が笑いながら言った。


『お前の後は物凄かったぞ。安全日じゃなかったら、出来た子供はお前の子だ。もしDNA鑑定したら、出てくるのはお前のだけだ』

そう言われて震え上がった。

だから捕まるのが怖くて、監督の言うがままに従うしかなかったんだ。




 悪質だった。
監督は彼女が処女だと知っていた。
それでもAV業界トップクラスの巨根を誇る俳優に遣らせたのだ。

監督の目的は苦痛に喘ぐ彼女の姿を撮影し、週刊紙に売り付けること。


後に、監督にも多額な借金があったと解った。
それを精算するために彼女を利用したのだ。


彼女の自殺した両親の借金だけではなかったんだ。

でも、それを知った時は既に時効が成立した後だった。

強姦罪も詐欺罪も共に七年だったんだ。

民事で訴える手もある。
時効は二十年で、犯人を知ってからは三年だそうだ。




 俺は自分が許せなくなっていた。

それと同時に、何としてでも彼女を救い出してやりたくなった。


『お前に何が出来る』
俺の中の俺が言う。


『そんなの解るはずがない……、でも彼女のために何かをやりたいんだ』


『お前のはただの護身だ』


『解ってる。自分の身を守りたいだけだって。だから監督に従ってしまったことも』


『それが護身だって言うんだ。何時も監督のせいにする。だからお前はあまちゃんなんだよ』


俺は本当は自分が甘いって自覚していたんだ。


ヌードモデルの彼女の時もそうだった。

成り行きに任せて遣っちまってた。
俺には許嫁がいる。

行方不明だが、俺と同じ誕生日の母さんの同級生の娘がいることも承知で、解っていながら遣っちまってたんだ。




 俺はその時、急に彼女の両親のことが気になった。
どうして彼女をおいて逝ったのか知りたくなったんだ。

でも其処で知っのは、九ヵ月の乳児が六ヵ月しかなく逮捕。の育児放棄した実母のことだった。


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