【完】女優橘遥の憂鬱
 「訴えよう」
俺は彼女に言った。


「貴女の両親は借金を背負わされて自殺していた。でも生命保険で完済していると聞いた。その借用書が監督の手にあったは、事務所から盗んだようだ。だから、貴女が監督を恐れる必要はないんだよ」

俺はそう言いながら、彼女を抱き締めた。


「ホラ監督があの時、『あぁ、本当だ。マジに気持ちいい!! コイツはいい拾い物をしたな』って言った後で言われたんだ。お前のが、物凄かったって。だから拾われたのは、貴女の中でイッタ時の物だと思ったんだ。でも違っていたみたいだね」


「うん」

彼女はそう言った後で笑いだした。


「後にも先に私の中で果てたのが貴方だけだったって言ったら、前の社長に抱き締めたられたよ」


「うん。俺も聞いて嬉しかったよ」


「社長を恨んでいたから……。でも、どうしても言いたくなっていたの。『最初は拒否したのよ。あの三人で撮影は終わったはずだから……。彼よっぽど気持ち良かったのか、私を堪能していたの。その時私の中でイッタの。後にも先に彼だけだった……』って言ってしまったの」

そう私は遂に告白していた。
彼の前で彼にも……


「私の中で果てたのは後にも先に貴方だけだった。私が受け入れた訳ではないけど……、それでも……それだけが救いだったから」


「俺は貴女と強引に遣ってしまった。それでも許してくれるのか?」


「あれがあったから私は辛い撮影にも耐えて来られた。私は他の男性に遣られている時にも、貴方の行為を思い出していたの」


「解っていた。解っていながら嫉妬していた。目の前で喘ぎ声を上げさせている男性達を……」


「社長がね『貴女、そのカメラマンを愛しているのね。でも良かったね。貴女の中で果てたのがその人だけで……。貴女はまだ誰にも汚されていない。私はそう思うよ』そう言ってくれたの。つまり不幸中の幸いなのよ」


「不幸中の幸い?」


「だって私は大好きだった貴方に又こうして会えた。社長に告白したから、貴方を解ってくれたと思うの」


「俺を理解?」


「そう……、貴方が私を守ってくれたから、又こうして会えたの。社長が此処を教えてくれたのでしょう?」

彼女の言葉に俺は頷いた。


確かに俺は社長に理解されたのかも知れない。
けれど俺は、訴えたられるのが怖くて逃げていただけだったんだ。




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