【完】女優橘遥の憂鬱
 「俺は此処が好きだ。生まれ育った此処が好きだ。でも今……」

海翔君が泣いていた。


海翔君は経済学部き籍をおいていた。
だから卒論にと、日本のこれから向かう先を模索していたようだ。


「みさとにも言ったんだけど……。気分転換に小説を読もうとしてあるサイトにアクセスしたら、減反政策を廃止する案があったんだ」


「えっ、それって何?」

俺は思わず聞いていた。


「なんでも安い輸入米を食べてみたら不味かったから、減反政策を廃止して米を輸出したらどうか。という物だった」


「おっ、それグッドアイデア」
俺は思わず言っていた。




 海翔君は以前東南アジア諸国で暮らしていた。
だからタイ米は当たり前だったそうだ。
でも日本の米を食べている内に慣れてしまって、タイ米を食べなくなったそうだ。


「その時思ったんだ。その主婦が書き込んだように世界中に日本の米を輸出するべきだとね」

海翔君はそう言いながら、その主婦の主張をノートに綴った物を見せてくれた。


その表紙には『エイプリルフール・愛の鐘プロジェクト』と書かれていた。




 【学生時代から小説を投稿してきた主婦です。

TPPが話題に上がり、物はためしに安い豪州米を購入してみました。

粘りもなく、不味い。
そこで思いましてた。
減反政策やめてどんどんお米を作って輸出したらどうかと。
農家は収入が減るでしょう。
減反政策の補助金が減る訳ですから。
でもその補助金は全部国民が納めた税金なのです。
減反することでお米を作らなくても収入になるシステムを考え直していただけますと嬉しいです。
日本のお米は美味しいから大丈夫です。
その時には、お米パンも一緒に紹介すると全世界に受け入れられると思います。】


そんな内容だったようだ。





 そこでみさとさんテレビで紹介されていたパーマカルチャーをアイツに話したそうだ。


まず草の根を鎌で切った後に種を撒いて、上に刈った草を乗せておくんらしい。

水もあげなくても、立派な野菜のが育つのみたいだ。

一番向くのはレタス。
レタスには虫が付き難いんだって。
いや、びっくり。

だから最初はこれからやったらいいと思った。
春菊も虫が付き難いので、パーマカルチャー向きだと言える。


パーマカルチャーは耕作放置地での確かな戦略になりうる可能性を秘めていると思ったのだ。




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