【完】女優橘遥の憂鬱
ジン・神と呼ばれた男
 某有名私立大学の夜間部に通っていた海翔君は、アルバイトでホストグラブのボーイをしていた。


学入試以前に其処で働いていたそうで、きっかけは彼女が所属したモデル事務所の美魔女社長だった。


『お前のチェリーを奪わせてくれー!!』

海翔君はニューハーフになった同級生に追い掛けられていた。
その時助けてくれたのが美魔女社長だったのだ。


社長はホストグラブのオーナーと知り合いで、海翔君を其処に紹介したのだ。


本当はオーナーのお嬢様お相手だったようだ。




 海翔君がその大学を選んだ理由は……

同じ資格が取れるのに授業料が安いそうだ。

昼間と夜では時間割が違う。
講義単位が少ないから、多額の授業料金は貰えない訳なのだ。

だから海翔君は頑張って、なるべく全課程に出席して単位を取得しようとしたのだ。


彼は経済学部の学生としても、久しぶりに帰ってきた日本を謳歌していたのだった。




 彼は確かに童貞だった。

だから面白半分に、それを誰が奪うかのゲームに巻き込まれただけだったそうだ。




 「俺は意を決して、あの女性が待つホテルに向かった」

海翔君が、あの時の全てを語り出した。


「ドアをノックしたら、バスローブで出てきてすぐにシャワー室に案内された。チェリーを奪うことが目当てだってすぐに解った。後悔した。来るんじゃなかったって思った。でももう遅かった。俺は言いなりになるしかなかったんだ」

一瞬、ヌードモデルの彼女と同じだと思った。


「目を瞑れば良いと、自分に言い聞かせた。でも、出来るもんかと本心が囁く。こんなことだったら、俺のせいでニューハーフなった奴にくれてやれば良かったとさえ思った。そうしていればこんな女性を相手にしなくて済んだのに……そう思ったんだ。あの、疑惑のチェリーボーイと書かれた週刊誌を見て驚いた。写真はあのホテルだったんだ。隠し撮りされていたんだよ。でも結局、失敗したからやっぱりゲイだったってことにされたんだ」


「あ、失敗したんだ」

俺は又気配りのない失言をしていた。


「俺は解っていたんだ。この女性を敵に回したら酷い目に合うことを。俺をナンバーワンにするために、前人者がどんな目に会ったかも知ってる」


海翔君にそんな罠が仕掛られていたなんて思いもよらなかった。
俺は失礼だと承知しながらも身を乗り出していた。




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