【完】女優橘遥の憂鬱
☆月陰幻夢・それぞれの哀しみの道
(だから俺は此処に居るんだ。この景色に魅入られて居るんだ。この地に呼ばれたから、此処に居るんだ)
俺はあの時、社長と話ながら、哀しみの道と此処と結び付けた。
まだ見たこともないはずの丘と……
「それって何」
「あっ、ヴィアドロローサ? 確かベンハーって映画に……」
「あ、ベンハー? 俺も見たな。確かキリストが十字路を背負わされて……」
「その道が、ヴィアドロローサって言うんだ。エルサレムの哀しみの道だよ」
「哀しみの道?」
「うん。俺にはそれが彼女が歩かされた棘の道のように思えてね。実は午前中、監督と面会していたんだ。実は監督は……」
ハッとした。
まさか……あのことを言うつもりだったのか?
彼女が実の父親に犯された事実を……
俺は何てバカなんだと思いながら、頭を抱えて踞り号泣した。
「実は監督には恋人がいて……、それが俺の同棲相手だったんだ」
苦し紛れにそう言った。
出来損ないの頭の中で、言い訳を必死に考える。
海翔君にも……
彼女にとっても身近な存在の海翔君だからこそ……
秘密は絶対に守らなければならない。
そう思った。
そうしなければ、彼女が此処で生きて行けないと思った。
「えっ、同棲?」
「ヌードモデルだったんだ。監督の仕事を紹介してくれたのは彼女だったんだ」
「つまり、監督の知り合いか?」
「そうだよね。そう考えるのが妥当だよね。でもまさか……、恋人だったなんて知らなかった」
「でも、それがどうして橘遥さんに結びつくんだ?」
(きた。そうきたか? あちゃ。口から出任せだったから考えていなかった。社長は確かに彼女が俺を愛していたと言った。だから監督は……)
でもそれが、ある真実を浮かび上らせた。
それは、監督が彼女をAVの撮影に器用した経緯だった。
監督は元カノを奪った社長と、恋人を奪った俺に復讐するために、俺の目の前で許嫁である彼女をいたぶったのではないのだろうか?
つまり、やっぱりターゲットは俺だと確信したのだった。
その途端に俺はワナワナと震え出した。
だから俺は又、言わなくてもいい真実を何も考えず言ってしまいそうだった。
仕方なく……
彼女との出会いから話すことにした。
俺はあの時、社長と話ながら、哀しみの道と此処と結び付けた。
まだ見たこともないはずの丘と……
「それって何」
「あっ、ヴィアドロローサ? 確かベンハーって映画に……」
「あ、ベンハー? 俺も見たな。確かキリストが十字路を背負わされて……」
「その道が、ヴィアドロローサって言うんだ。エルサレムの哀しみの道だよ」
「哀しみの道?」
「うん。俺にはそれが彼女が歩かされた棘の道のように思えてね。実は午前中、監督と面会していたんだ。実は監督は……」
ハッとした。
まさか……あのことを言うつもりだったのか?
彼女が実の父親に犯された事実を……
俺は何てバカなんだと思いながら、頭を抱えて踞り号泣した。
「実は監督には恋人がいて……、それが俺の同棲相手だったんだ」
苦し紛れにそう言った。
出来損ないの頭の中で、言い訳を必死に考える。
海翔君にも……
彼女にとっても身近な存在の海翔君だからこそ……
秘密は絶対に守らなければならない。
そう思った。
そうしなければ、彼女が此処で生きて行けないと思った。
「えっ、同棲?」
「ヌードモデルだったんだ。監督の仕事を紹介してくれたのは彼女だったんだ」
「つまり、監督の知り合いか?」
「そうだよね。そう考えるのが妥当だよね。でもまさか……、恋人だったなんて知らなかった」
「でも、それがどうして橘遥さんに結びつくんだ?」
(きた。そうきたか? あちゃ。口から出任せだったから考えていなかった。社長は確かに彼女が俺を愛していたと言った。だから監督は……)
でもそれが、ある真実を浮かび上らせた。
それは、監督が彼女をAVの撮影に器用した経緯だった。
監督は元カノを奪った社長と、恋人を奪った俺に復讐するために、俺の目の前で許嫁である彼女をいたぶったのではないのだろうか?
つまり、やっぱりターゲットは俺だと確信したのだった。
その途端に俺はワナワナと震え出した。
だから俺は又、言わなくてもいい真実を何も考えず言ってしまいそうだった。
仕方なく……
彼女との出会いから話すことにした。