【完】女優橘遥の憂鬱
 「もしこの椅子があればとずっと思ってた」


「俺もだよ。最初が俺だったなら、貴女の苦しみを救えたのではないのかと……」


「優しくしてね」
彼女そう言いながらウェディングドレスを脱いで椅子に肘を着けた。


「いきなりでいいの。もし物凄く痛かったら、私ヴァージンを感じることが出来るかも知れないから……」

それでも俺はそっと近付けた。


本当は痛いのに、彼女は我慢をしてくれていた。
俺は彼女にヴァージンを感じた。
俺が最初の男になったことを感じた。


「あん」
その時、彼女の口から無意識に出た言葉に驚いた。

それは、あの日。

俺に犯されながら発していたものだった……


「私はやはりあの時貴方にイカされたのね」


「そうみたいだ。貴女のあの時の声が又聞けるなんて……。俺は幸せ者だ。世界一の幸せ者だ。あぁ、やっぱり気持ちいい!!」

俺はやっと彼女の中で果てていた。


(これが済んだら……)

俺はとんでもない発想をしていた。
それは、彼女に初めてをあげる方法だった。


「これが夫婦の愛の形だよ」

それは正常位だった。

俺は脱いだタキシードの上で彼女を抱き締めながら泣いていた。
初めてをあげられた喜びに震えながら……


「貴女は今、ヴァージンだ。あぁ、この日をどんなに待っていたか……。あぁ、気持ちいい。最高だー!!」

安全日など関係ない。
俺達はやりたい時に遣るだけの、超ラブラブな夫婦でいればいいのだ。


彼女は俺に抱かれながら泣いていた。




 「八年前のあの日。貴女は確かに全員に犯された。でも思い出して……。中で果てたのは俺だけなんだよ。だから俺は貴女の最初の男性なんだよ。そして今、最後の男性になった」

俺は泣いていた。

そう、俺は彼女にとって初めての男性なのだ。

あの魔の八年間、俺以外に彼女の中に放出した人は居ない。
あの三人だって、最後は何時もの癖で出してから放出していたのだ。


「監督が言ったろ? あの時貴女に子供が出来ていななら……」


「そう……、貴方の子供だった」

彼女は泣いていた。


「私は貴方以外、誰にも感じなかった。それは、又こうしてもらいたくて……」


その言葉が俺に火を着けた。


「俺を幸せにしてくれ」

俺は又……
彼女を目指して突進していた。


「外で皆待ってる」


「海翔君が悪いんだ。好きにさせてもらおう」

俺は強引に彼女を拘束した。

俺の夢は今叶った。




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