【完】女優橘遥の憂鬱
「最後にこれだけは言わせてください。私はこの娘を傷付けようとする者を決して許さない。これ以上、興味本意での取材等行わないでください。お願い致します」
父は泣いていた。
会場からもすすり泣きが聞こえていた。
二十八年を経てやっと出会えた父娘。
その姿に、惜しみ無い拍手が贈られていた。
「それではそろそろ記者会見は終了させていただきます。最後にご質問はございませんか?」
会場を取り仕切っていた関係者が言った。
でも誰からも質問は出て来なかった。
父が泣いている傍で、私が第二の母を抱いて号泣していたから躊躇したのだ。
「それではそろそろ、質疑応答の時間は終了させていただきます。最後にこれだけは言わせてください。私は又此処に工場を復活させます。させてみせます。いえ、させてください。どうか皆様のお力をお貸しください。よろしくお願い致します」
父はもう一度深々と頭を下げた。
小さな控え室に第二の母と向かう。
その時、不思議な感覚にとらわれた。
何故か歩き方が若いのだ。
それはまるでモデル歩きのようだった。
私と会えて嬉しいからなのか、とも考えてみた。
それでも違和感がある。
私は首を頻りに傾けていた。
「どうしてくれるの私の美貌?」
控え室に入り辺りを見回してから第二の母が言った。
その声に聞き覚えがあった。
「もしかしたら社長?」
「えっ、えっーー!?」
彼も突拍子のない声を上げた。
「うまく誤魔化せたね」
社長は誰かに話し掛けていた。
「無理なことを引き受けていただきましてありがとうございました」
そう言いながら姿を現したのは海翔さんだった。
「やっぱりな」
彼が言う。
私は呆気に取られていた。
「大きな音がした時、記者席を見たんだ。皆呆気に取られていた。そして誰がやったのかと探りを入れていた。何となくだが、コイツ等じゃないと思ったんだよ」
「もしかしたら、父に頼まれて?」
「いいえ、違うよ。社長は私の話を信じてた。私を橘はるかさんだと信じていたわ。だから、一緒に愛の鐘を鳴らしてくれたの」
「あっ、お色直しの」
「あんまり貴女達が遅いから、強引に誘っちゃったわ。中で何をしていたか知らないけど……」
社長は上目遣いで彼と私を交互に見た。
父は泣いていた。
会場からもすすり泣きが聞こえていた。
二十八年を経てやっと出会えた父娘。
その姿に、惜しみ無い拍手が贈られていた。
「それではそろそろ記者会見は終了させていただきます。最後にご質問はございませんか?」
会場を取り仕切っていた関係者が言った。
でも誰からも質問は出て来なかった。
父が泣いている傍で、私が第二の母を抱いて号泣していたから躊躇したのだ。
「それではそろそろ、質疑応答の時間は終了させていただきます。最後にこれだけは言わせてください。私は又此処に工場を復活させます。させてみせます。いえ、させてください。どうか皆様のお力をお貸しください。よろしくお願い致します」
父はもう一度深々と頭を下げた。
小さな控え室に第二の母と向かう。
その時、不思議な感覚にとらわれた。
何故か歩き方が若いのだ。
それはまるでモデル歩きのようだった。
私と会えて嬉しいからなのか、とも考えてみた。
それでも違和感がある。
私は首を頻りに傾けていた。
「どうしてくれるの私の美貌?」
控え室に入り辺りを見回してから第二の母が言った。
その声に聞き覚えがあった。
「もしかしたら社長?」
「えっ、えっーー!?」
彼も突拍子のない声を上げた。
「うまく誤魔化せたね」
社長は誰かに話し掛けていた。
「無理なことを引き受けていただきましてありがとうございました」
そう言いながら姿を現したのは海翔さんだった。
「やっぱりな」
彼が言う。
私は呆気に取られていた。
「大きな音がした時、記者席を見たんだ。皆呆気に取られていた。そして誰がやったのかと探りを入れていた。何となくだが、コイツ等じゃないと思ったんだよ」
「もしかしたら、父に頼まれて?」
「いいえ、違うよ。社長は私の話を信じてた。私を橘はるかさんだと信じていたわ。だから、一緒に愛の鐘を鳴らしてくれたの」
「あっ、お色直しの」
「あんまり貴女達が遅いから、強引に誘っちゃったわ。中で何をしていたか知らないけど……」
社長は上目遣いで彼と私を交互に見た。