人魚
「…………誰、あんた」
あたしは口元だけ動かした。
「まぁまぁ、そんな恐い顔しないでよ。
ガム食べる?」
少年はポケットからガムを取り出すと、あたしに差し出した。
あたしは一瞬それを確認した後、
「いらない」
また、口元で返事をした。
「そう?
あれだね。おねぃさん、クールビューティーだね」
ガムをポケットにしまいながら、
訳のわからないことを言う。
だから、なんなんだよこいつは!
「なんだこいつって顔してるね。
俺は裕生。あそこから、たまにおねぃさんの観察してたんだ」
少年は少し離れた高い建物を指差した。
「.........病院?」
「そう。俺入院してんの」
にこっと笑うその笑顔からは
具合の悪さなど感じられない。
あやしい.........