Spicy&Sweet
とけあって、熱く甘く
お洒落だけれど気取らないビストロでランチをとって。
女性向けのロマンチックな恋愛映画を一緒に見て少し泣いて。
そして夕暮れ時には、彼のいきつけなのだという隠れ家風のワインバーに入った。
彼の選ぶものはどれも“女性を喜ばせよう”という気遣いに満ちていて、それはとても嬉しいのだけれど、どこか他人行儀な気がして切なかった。
少しのワインで身体は温まり、太ももにつけた甘い香りはきっと今が食べ頃。
だけど、初めてのデートでそんな場所に香り付けするのは、もしかしたらやりすぎだったのかも……
徐々に酔いがまわってくると、そんな弱気な自分が顔を出してくる。
徳永さんの方も口数が減ってきていて、甘すぎる自分の香りを余計みじめに思い始めたときだった。
「……本当は、さ」
何杯目かのグラスを空にした徳永さんが、静かに呟く。
「こんな、紳士的な男じゃないんだ、僕は」
そしてカウンターに肘を突きながら、瞳に私の姿を映す。
紳士的じゃない――。それは今日の彼とは真逆の姿だけれど……
「じゃあ、本当の徳永さんは……?」
私はそう聞きながら、カウンターの下で組んでいた脚をさりげなく組み替えた。
「――少なくとも、すぐ近くにこんな甘い香りをさせてる女の子がいるのに、悠長に酒を飲むなんてことはしない」
その発言に、私の心臓は一度大きく波打った。
……徳永さんは、気づいてる。
私から漂う香りも、そして私がどんな思いでそれを纏ってきたのかも。