Spicy&Sweet



二人の息づかいが落ち着いてきた頃、彼の腕の中で幸福な気だるさに浸りながら、私は尋ねた。


「今日って、芹香ちゃんは……?」

「ああ、うちの店の従業員に預かってもらってる」


アロマショップの従業員?
……それって、きっと。


「女性……ですよね?」


たっぷり甘い時間を過ごしておきながら、それでも小さな嫉妬はすぐに芽を出すから困る。

こんなに素敵な男性がオーナーだなんて、お店で働く人みんなが羨ましい。


「妬いてるの?」


わざと意地悪い口調で、徳永さんが言う。

けれど絶えず優しい手つきで私の前髪を梳いていて、そこにはちゃんと愛情が感じられた。


「大丈夫だよ。今、きみに贈る指輪について考えてたところなんだ。まだ知り合ったばかりだけど、“恋人の証”として贈らせてくれないかな。
今度は返されないように、きみを大切にする、必ず」

「徳永さん……」


私は滲んだ涙を隠すように、彼の裸の胸に顔を押し付けた。

そこには、だいぶ薄れてしまったけれど、混じりあった二人分の香りが残っていた。

スパイシーな彼と、スイートな私。

これからもずっと、熱くて甘い二人でいられますように。

そう願いながら、彼のぬくもりの中でそっと瞳を閉じる。







――それにしても、首筋につけられた跡はどうしよう。


おませな彼の娘に明日、それを指摘されるのかと思うと、私は恥ずかしさで顔から火が出そうになるのだった。






-end-


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