ごめんね、ボクのカラダ
すぐ横の喫煙所で顔見知りの患者さんに一服を勧められた。普段特別喫煙しない裕樹はこの時は吸いたかった。いや、なにかしていないと落着かないのだ。それは、これから永い闘病生活が覚悟せざるを得ない事を裕樹自身が分っていたからである。

空を見上げた。煙を吐き出した。積乱雲の白が空の青を際立てている。飛行船が飛んでいる。自然と涙がこぼれた。その年初めてとんぼを見た。夏の終わりを告げている。
< 10 / 19 >

この作品をシェア

pagetop