ごめんね、ボクのカラダ
4月から都内大学病院の主治医が神奈川県内の大学病院に転勤になり、主治医を追いかけるように裕樹の通院もそちらの大学病院に移った。
前回オペした縫合線の皮膚組織がまだ新しい為か、通常の皮膚部位よりはるかに薄い。裕樹は日常生活で細心の注意を払っていた。それでも坐骨部分は圧迫してしまい、薄い皮膚部位から針で刺したような穴が開いた。

「早乙女さん、これ植皮した方が治りが早いんで一度入院して植皮のオペしましょう。」

「え?入院?オペ?」

裕樹の頭を前回の入院生活の辛さが過った。

「オペって言っても今回は局所麻酔で出来るし、入院も2週間位で大丈夫ですから。」
「あぁ、そうですか。いつから入院で?」
「病棟にベッドの状況とか受け入れ態勢を確認してから連絡します。」
「はい。分りました。宜しくお願い致します。」裕樹は憂鬱だった。まっすぐ帰路には着かず車を走らせ湘南の海を見に行った。気晴らしたかった。ひとりファインダーを覗いて見る海は青々していて、絵の具では決して出せない青い色が何ともいえなかった。ふと昔彼女と来た事を思い出した。あの頃は辛かった。そうした事を裕樹は後悔していない。それどころか本気でよかったと思っていた。
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