ごめんね、ボクのカラダ
「ん。ありがとう。大丈夫だよ。」

裕樹は精一杯の普通の表情で応えた。裕樹は気を使われたくなかったし雰囲気を壊し
たくなかった。それだけにこの日を楽しみにしていたのだ。

『暑い。頭がボ〜っとしてる。』

この時はっきり裕樹は意識した。奈央から差し出された肉も一切れ口に入れたら吐き
気を催した。みんなの目を気にして吐き出した。
『ダメだ。取敢えず薬で凌ごう。』

水道のある場所まで移動した。車椅子には優しくない舗装状況も手伝って、裕樹には
結構な距離に感じられた。

『頭が熱い』

少し座面の位置を前にずらし、前屈みになって蛇口の下に頭を置いた。冷却開始。

『う゛〜〜気持ちぃ〜。完全にオーバーヒートだ。』

裕樹が行水してから10分くらい経っただろうか?

「早乙女さん、なにやってるんですか?」

すぐにわかった。半笑いの声の持ち主は奈央である。

「いや、暑くて。完全オーバーヒートだな。」

「大丈夫ですか?目の下にクマ飼ってますよ。」
普通じゃないのが奈央には分っていたようだ。
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