無愛想な彼が私を見ない理由



「私は佐倉くんのこと………」


ここまで言いかけたのに、それ以上が出ない。

言えない。


“好き” “大好き”って言いたいのに、

言葉が出ない。


私には多分、彼女にさえ言えないほど、

勇気がない。


『………………いきなりごめんね』


私が言葉に詰まっていると、早瀬さんは私より先に、

その沈黙を破った。


すると早瀬さんは、私をじっと見て、


『葉月ちゃんには言いたくて』


と言った。





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