この香りで惑わせて



「亜美は、初めてを俺に捧げてくれただろ? あの時、痛みに堪えてたのも知ってる」


 たしかに、初めての時は痛くて、二度とセックスなんてしたくないと思った。


 でも、二度目に抱かれた時には、最初の時とは違って嘘みたいに気持ちが良かった。


「だから、無理強いはしたくなかったし、もしかしたら二度としたくないんじゃないかって考えた」


「そんなことっ」


 ない。


 そう言おうとしたのに、彼の人差し指があたしの唇に当てられて、言わせてもらえなかった。


「それに、亜美は誘ってくれなかったしね。一緒に部屋に来てほしいとかもなかった」


「それは……自分から言うのが恥ずかしくて」


「うん。わかってる」


 彼は優しく微笑んだ。

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