この香りで惑わせて
つけて、香って、惑わせて


 

 夜、約束どうり彼とのデートに向かった。


 待ち合わせは、昔から変わらず小さなイタリア料理店。


 共通の友人がコックを勤める店で、雑誌やテレビの取材は断っているのに人気な店だ。


 おすすめの白ワインと料理を頂き、近況報告みたいな会話を楽しみ、駐車場までの道をゆっくりと歩く。


 今夜も、ホテルに行くような雰囲気ではない。


 今まで自分から誘ったこともないし、それをして嫌われたらなんて事を考えてしまう。


 だんだん愛されている自信がなくなってくる。


 本当は別れたいけど、言い出せないんじゃないか。


 セックスをしたがらないのは、別に発散させてくれる相手がいるんじゃないか。


 だんだん思考がネガティブになってくる。





 
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