この香りで惑わせて
『紳士的な男も野獣に変わりますよ』
半信半疑で小瓶を手にして、彼がまだ戻って来てないのを確認して吹きかけた。
スカートをたくしあげるのは恥ずかしかったけど、腿の内側にも吹きかける。
こんな香水で、何かが変わるなんて思ってない。
でも、心のどこかでは変わったらいいなとも思ってる。
あまりにも矛盾してる。
「お待たせ」
その声に、あたしは小瓶を鞄に押し込んで、助手席に座った。
車はゆっくりと走りだし、車の少ない通りをあたしの家へと向かっていく。
「亜美……香水なんてつけてたっけ?」
「今まではつけてないよ。でも……今日、同期の子に試供品を貰ったからつけてみたの」
彼が気づいたことに驚いた。