愛という名の魔法
駅に着いて、里緒奈は乗客と一緒に
電車から押し出された。

「あーあ」思わずため息が出てしまう。


「おはよー」背中で明るく元気な声。
 千佳だ。同級生の彼女は幸せ一杯。


「おはよー、今日も元気だね、千佳」
「うふふ、昨日デートしちゃった」
「えーっ、すごい! どこに行ったん?」


 千佳は先月、隣の南高等学校の和也から
「付き合ってください」と申し込まれた。


南高等学校はこの付近では有名な
進学校で偏差値の高いことでも
知られていた。


千佳は小柄で可愛い。髪も「天然です」と
公言しているが、必死にカーラで
巻いているのを里緒奈は知っていた。


自分の魅力を最大限に引き出す術を
身につけている。言葉も可愛く、
甘えたしぐさも、板についていた。



決まり文句の「お友達なら」と
スタートしたばかりなのに。


頬を少し赤らめて嬉しそうに話す
千佳をみつめ、可愛いなと里緒奈は
思った。




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