大好きな君の。
お母さんと昔手をつないで登ったんだよな。
上まで駆け上がる。懐かしさがこみ上げた。
『お母さん!早く早く!』
『はいはい、あんまり走るとこけるからね。』
『大丈夫だよ!わあ!車がいっぱい!』
お母さん。お母さん。お母さん。
また、ぎゅって、手を握って、危ないわよって
優しく、少し怖く、言って?
お母さん、お父さん。私、今から、そっちに行くからね。
歩道橋の手すりにもたれかかる。もう、いつ落ちてもおかしくない。
この手を、あとはこの手を離してしまえば……。
ぶわっと風が吹いて私の髪の毛を靡かせた。
まるで、そっちに行っちゃダメだって言っているかのように。
チャンスならまだある。何も今日じゃなくても良い。
手すりから少し離れてため息をつく。
「あれ…?」
あの時見た、お母さんと来たときに見た風景と、
今いる場所から見えた風景は、なんにも変わんなくて。
ここ、お母さんと来た歩道橋?帰り道、わかるかもしれない。
確か、ここを下りて。
右だっけ。左だっけ。