大好きな君の。
秘密のこと。
「優哉、」
浮かない顔の憐ちゃんは小さく呟いた。もっと大きな声で、呼べばいいのに。
「あ、昨日の子だあ。俺が起きたときにいた子だよね? えと、そっちは弟、だっけ?」
優哉さんは、こちらを見て優し気に微笑んだ。
………私のこと、覚えていてくれたんだ!!
鼓動が、速くなったような気がした。顔のまわりがあっつい。
心臓の病気……?
「あ、水野朋実(ミズノ トモミ)です」
「ともみちゃん、朋ちゃんて呼ぶね。えーと、俺は、なんだったかなあ」
目が覚めてまだ1日だから、ぼけてるのか。それとも、もとがこの性格なのか。
とりあえず優哉さんが笑うから、私も笑う。
憐ちゃんの浮かない顔はかわらない。
「優哉さん、ですよね。憐ちゃんのお兄さんの」
「あー、そうそう。ゆうやとか言ってたっけ」
やっぱり優哉さんはにこにこした。
なんだかよくわからないけど彼のペースに乗せられていることだけはわかった。
「朋実、ちょっとでよう」
憐ちゃんに車いすをおされ、病室をあとにした。
出る前に一度振り返ったときも、やっぱり優哉さんは笑っていた。