大好きな君の。
「優哉、記憶なくなって丁度いいんだ」
「そんなわけないじゃん。誰だって記憶がなくて良い訳ない」
「優哉には、思い出したくないことがあるんだよ。朋実だってあるだろ?親のこととか……」
お母さんと、お父さんのこと。
もし、覚えてなかったら、こんなにつらい思いしなくていいかもしれない。
楽しい記憶がなかったら、
小さい頃からずっとおばあちゃん家で暮らしていたって思い込んでいたら……。
でも、それでもやっぱり、なくして良いものだなんて思えない。
ていうか……。
「なんで、知ってるの?」
「…?」
「私に親がいないこと。私がそれで苦しんでること」
「……ごめん、朋実のおばあさんに聞いた」
「そ、か」
「朋実には、そのこと言っておこうと思って。病室戻るか」
「……うん」
私はまた、憐ちゃんに車いすを押されて優哉さんの病室に戻った。