大好きな君の。
1章 すべてのはじまり。
なれない場所。
*朋実視点。*
新幹線に乗って1時間。それからバスで30分。
何日か分の洋服を詰めたキャリーバッグ持って地図だけを頼りに祖母の家を目指す。
幾つもの県を跨いで来たその地域の街並みは私にはまったく見慣れないものだった。
暫く歩くと、少しだけ見覚えのある家が並びはじめた。
“水野” そうかかれた家を見つけ出し、インターフォンを押す。
ピンポ-ンと鳴り響く。
ドアが開いておばあちゃんが顔を見せた。
「あらあら、朋ちゃん。よく来たわねえ」
優し気に微笑む祖母。
祖母を見たのは、お葬式以来。
嫌でも思い出す。
涙が出てしまうかと思った。