大好きな君の。
とりあえず、体勢を戻し、朋ちゃんを車いすに寝かせようと試みる。
ふにゃふにゃと柔らかそうなほっぺたが、俺を挑発した。
好奇心に負け、ほっぺたをつついた。
彼女は、嬉しそうに微笑んだ。
「お母さんっ………」
嬉しそうに、でもどこか切なそうに、そう呼ぶ彼女もまた何かを抱えているんだと思う。
彼女の顔には、いくつかの涙が乾いた筋と、真っ赤にはれた目。
朋ちゃんが、車いすの背もたれによしかかって眠っていることを確認し、窓の外を見つめた。
………………ひらひらと、桜が散っていた。